骨粗鬆症

骨粗鬆症osteoporosis

骨粗鬆症とは

骨粗鬆症(こつそしょうしょう)は、骨の中のカルシウムやたんぱく質などの成分が減少し、骨密度が低下して折れやすくなる病気です。初期のうちは痛みや違和感がないことが多く、気づかないうちに骨が折れている「いつの間にか骨折(脆弱性骨折:ぜいじゃくせいこっせつ)」を起こしている方も少なくありません。特に高齢になると、転倒をきっかけに骨折し、歩行が難しくなったり、寝たきりにつながったりすることがあります。骨は私たちの体を支える「柱」です。健康な骨を保つことが、いつまでも自分らしく生活を続けるための大切なポイントです。

(図)健康な人と骨粗鬆症の人との骨密度の違い

骨粗鬆症のセルフチェック

骨粗鬆症はゆっくり進行しますが、次のような変化が現れたら注意が必要です。

  • 背中が丸くなってきた
  • 昔より身長が2〜3cm以上縮んだ
  • 腰や背中がだるい、痛む
  • 転んだり、軽く尻もちをついたりしただけで骨折した
  • 食事量が減り、少しの量で満腹になる

これらは「年齢のせい」と思われがちですが、骨粗鬆症のサインの場合があります。少しでも心当たりがあれば、早めに骨密度の検査を受けましょう。

骨粗鬆症の種類

骨粗鬆症には、原因によって2つのタイプがあります。

どちらのタイプかによって、治療の方向性がより明確になります。

原発性骨粗鬆症

特別な病気がなく、加齢や閉経など自然な変化により起こるタイプです。

日本人患者さまの大部分を占めます。特に閉経後の女性に多くみられます。

続発性骨粗鬆症

他の病気や薬の影響で骨がもろくなるタイプです。甲状腺や副甲状腺の病気、糖尿病、腎臓病、ステロイド薬の長期使用などが関係することがあります。

骨粗鬆症の原因

骨粗鬆症は、ひとつの理由だけで起こるわけではなく、いくつもの要因が関係しています。

加齢

年齢を重ねると、骨を作る働きが弱まり、古い骨を壊す働きとのバランスが崩れます。その結果、骨の密度が減ってしまいます。

女性ホルモン(エストロゲン)の影響

女性は閉経(平均50歳前後)により女性ホルモン(エストロゲン)が急激に減少します。このホルモンには骨を守る働きがあるため、閉経後は骨密度が低下しやすくなります。

栄養不足

カルシウム、ビタミンD、ビタミンK、たんぱく質など骨づくりに欠かせない栄養素が不足すると、骨を作る材料が足りなくなるため、骨が弱くなります。

運動不足

骨は、歩いたり軽い衝撃を受けたりすることで強くなります。運動不足の生活では骨が刺激を受けず、弱くなりやすい傾向があります。

喫煙・過度の飲酒

タバコやお酒は骨の代謝に悪影響を与え、骨密度を低下させることがあります。

病気や薬の影響

甲状腺や副甲状腺の病気、腎臓病、糖尿病、ステロイド薬の長期間使用なども、骨を弱くする原因となります。

骨の働きと骨代謝

骨は、ただの「硬い組織」ではありません。体の中で常に「古い骨を壊す(骨吸収)」と「新しい骨を作る(骨形成)」という入れ替わり(リモデリング)を繰り返しています。

若いうちはこのバランスが保たれていますが、年齢とともに骨形成の力が弱まり、壊す働きの方が強くなります。その結果、骨がスカスカになり、もろくなっていきます。

この骨代謝のバランスを整えることが、骨粗鬆症の治療と予防の基本になります。

(図)骨代謝のサイクル

骨粗鬆症により骨折しやすい部位

骨粗鬆症で骨が弱くなると、次のような部位に骨折が起こりやすくなります。

<背骨> 脊椎圧迫骨折(せきついあっぱくこっせつ)

転倒や尻もちといった軽い衝撃でも、背骨がつぶれることがあります。背中が丸くなる、身長が縮むといった変化は、この骨折が原因の場合もあります。

<太ももの付け根> 大腿骨頚部骨折(だいたいこつけいぶこっせつ)

転倒で起こりやすく、強い痛みで歩けなくなることがあります。入院や手術が必要になる場合もあり、高齢者では寝たきりの原因の一つです。

<手首> 橈骨遠位端骨折(とうこつえんいたんこっせつ)

転んで手をついた時に起こることが多く、日常生活に支障をきたします。

<肩> 上腕骨近位端骨折(じょうわんこつきんいたんこっせつ)

転倒した時に肩をぶつけることで起こります。腕が上がらない、服の着脱がしにくいなど不便が生じます。

(図)骨粗鬆症で骨折しやすい部位

骨粗鬆症の検査・診断

骨粗鬆症は、外見だけでは分かりません。

当院では、「骨粗鬆症の予防と診断ガイドライン*1」に基づいて、以下の検査を行っています。

*1(参考)骨粗鬆症の予防と診断ガイドライン2025年版

http://www.josteo.com/data/publications/guideline/2025_01.pdf

問診・視診

身長の変化、家族歴、生活習慣、服薬歴、閉経の有無などを詳しくお伺いします。

X線(レントゲン)検査

背骨や股関節の骨折・変形の有無を確認します。「いつの間にか骨折(脆弱性骨折)」が見つかることもあります。

骨密度検査(DEXA法)

骨粗鬆症の影響が出やすい腰の骨(腰椎)と太ももの付け根(大腿骨)に微量のX線を当て、骨密度を測定します。検査は数分で終わり、痛みはありません。治療経過の確認としても行うことがあります。保険診療で受けることができます。

血液検査・尿検査

骨を作る、壊すといった骨代謝のバランスを確認する「骨代謝マーカー」や、カルシウム・ビタミンDなど骨の成分値を調べ、治療方針を立てます。

骨粗鬆症の治療

当院では、身体への負担をできるだけ少なくし、薬物療法と生活習慣の改善を組み合わせて治療を行います。

薬物療法

患者さまの骨の状態や年齢、性別、骨折の有無などに応じて、次のような薬を使い分けます。(いずれも保険適用可)

骨吸収抑制薬

骨を壊す細胞(破骨細胞)の働きを抑えます。

【主な薬剤】ビスホスホネート製剤、SERM(選択的エストロゲン受容体調節薬)、デノスマブなど

骨形成促進薬

骨を作る細胞(骨芽細胞)の働きを高めます。

【主な薬剤】副甲状腺ホルモン関連製剤(テリパラチド、アバロパラチドなど)

補助薬

骨の質を整える薬を併用します。

【主な薬剤】カルシウム、ビタミンD、ビタミンKなど

薬によっては胃の不快感や血中カルシウムの低下、まれに顎(あご)の骨に影響が出ることがあるため、医師の指示に従って安全に続けることが大切です。

<新しい薬で治療の幅が広がっています>

2025年に改訂されたガイドラインでは、アバロパラチド、ロモソズマブ、ゾレドロン酸といった新しい薬が紹介されています。これらの薬は、骨を作る働きを高めながら、骨を壊す働きも抑えるといった特徴があり、注射や点滴で投与するタイプもあります。治療の選択肢が広がり、患者さん一人ひとりに合った治療を選びやすくなっています。

リハビリテーション

国家資格である理学療法士が、患者さまの筋力・姿勢・歩行を評価し、転倒しにくい身体づくりをサポートします。軽い筋トレやバランス練習を取り入れながら、無理なく継続できる内容をご提案します。

生活習慣の見直し

  • 食事:牛乳、小魚、豆腐、納豆、緑黄色野菜などを積極的に摂りましょう。
  • 運動:ウォーキング、かかと上げ、片足立ちなど、毎日少しずつ動く習慣をつけましょう。
  • 日光浴:1日15分程度、日光に当たると、体内でビタミンDが作られます。
  • 転倒予防:段差やカーペットの端などでつまずかないよう、住まいの環境を整えることをおすすめします。

よくある質問

骨粗鬆症の発症は、年齢的に仕方のないことですか?
加齢は発症要因の一つですが、「年のせい」と諦める必要はありません。食事や運動、薬物療法、生活習慣の見直しなど適切な治療を続けることで、骨の強さを保ち、転倒や骨折を防ぎやすくなります。
男性や若い人も骨粗鬆症になりますか?
はい。男性でも、加齢や喫煙、飲酒、薬の影響などで発症することがあります。また、若い方も過度なダイエットや運動不足が原因で骨密度が低下することがあります。
骨粗鬆症を予防するためにできることはありますか?
カルシウム・ビタミンD・ビタミンKなどをバランスよく摂り、1日30分・週3回以上を目安に適度な運動を続けましょう。また、50歳以降の方は定期的に骨密度を測定し、早めに対策を行うことが大切です。

(図)骨強化対策例

院長からのひと言

骨粗鬆症は、静かに進行する病気ですが、早めに気づけば将来の骨折を防ぐことができます。当院では「医療を身近に」をモットーに、原因を早期に診断し、生活に寄り添った治療を大切にしています。骨の状態や体質、生活リズムに合わせて、無理なく続けられる方法を一緒に考えていきましょう。気になる症状や不安があれば、どうぞ遠慮なくご相談ください。皆さまの骨の健康を守るお手伝いをいたします。

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